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人工透析と入院
No.21 2010年 4月筆者の友人に人工透析を継続して長年順調に健康管理をしている人が数人いて、二人に取材して人工透析の勘所を聞きました。経験談を初め、勉強になることがたくさんありました。
人工透析が必要と診断された方にはそれ自体が衝撃でしょう。これから先の生活に対する大きな不安があると思います。正しい知識を習得して病院・医院の方々と協力していけば長期にわたって良好な状態を保つことが可能であると自信を持ちました。
大部分の方が人工透析を理解して、病との【共存】を受け入れていらっしゃるようです。
シャント作成手術
まずはシャント作成手術が必要になりますが、これについては多くの記述がWEBにありますので参考になります。日帰りで可能なこともあります。実際に人工透析を実施する病院・医院とは異なる病院でシャント作成手術をして貰うことが多いので、病院間の連携が必要です。全身状態を整えて、血液検査(例:ウィルス性肝炎、HIV、貧血に関する検査)を実施して、条件が整えば手術に臨むことになります。
人工透析にいたるまでの過程で、慢性腎不全(糖尿病性腎不全など)の治療を継続してきたはずですので、その病院に相談するのが良いでしょう。
筆者がインタビューした友人からは長期に安定した好ましい状態を保つコツを聞くことができました。
第一に信頼の置ける経験豊富な病院でシャント作成手術を受けることです。シャント作成手術の成果はその後の人工透析を続ける上で長い期間にわたってシャントを使えるかどうかということを決める重要なことなのです。
人工透析のために血管に針を刺して毎分200mlの血流を確保するので、手術後の長期間、シャントの管理は非常に重要なことになります。安全のために一泊の手術入院を勧めるというのが大方の経験者の意見でした。在院中にシャントの管理方法や食事についての集中学習をする機会があります。
第二に手術を施した部位の養護が大切です。運動や、重い荷物の運び方など、腕の使い方について学習してください。長期間シャントを利用するので、「長持ちさせる」ことが今後の人工透析の便宜と生活の快適度(QOL)を決める重要な要素になります。血管の健全性を保つように医師も気をつけています。
シャントを設ける代わりに腹膜透析という方法がありますが、透析時間の制約が少ない、心臓や血管の負担が少ないなど利点もある反面、腹膜の機能低下や感染症など多少の問題が残っています。あとで血液透析療法に移行するという選択肢があります。
入院中に人工透析を受ける同じ境遇の人々との集まりに参加する機会もあるでしょう。いろいろと役立つ経験談を交えて交歓するのは気持ちの上でも助けになると思います。インターネットを通じて情報交換したり、地域の集まりに参加したりする機会も生まれることがあります。
人工透析病院・医院の選択
透析を実施する医院や病院については仕事や日常生活の便宜を第一に考えて選びます。
- 自宅の近傍:年始年末、連休の時に便利
- 通勤途上、勤め先の近傍
- 旅行先など、遠隔地で人工透析を受けるための連携の確認
自宅近くの医院と勤務地の病院連携できれば通年の通院に便利です。
旅行先の都市の病院を選んで紹介状を書いてもらって旅行先に持参し、透析データをFAXまたはメールで送ってもらいます。通院中の病院が医療ネットワークを通して旅先の病院と緊密な連携を取る時代になっています。
人工透析の環境改善
1回4時間ほど、週に2~3回の人工透析は非常に疲れるものです。長時間拘束状態になり、その間、気を紛らわすことは容易ではありません。被透析者の要望を尋ねると、いろいろなツールが求められています。
- 片手で操作できる書見台
- 個人用のテレビ
- 個人用のオーディオ
- 人工透析終了後の休憩室
何にも増して、医師や医療スタッフの「力」、適切な対応と暖かさは大切だとのことです。
人工透析を巡る高齢化社会の諸問題
長期療養入院中の人工透析の必要性が高まっています。高齢化にともなって腎疾患が増え、入院期間が長期化して、軽度の認知症や合併症をもつ高齢者の人工透析の実施の患者さんの難しい人工透析を実施しなくてはなりません。
筆者が足利中央病院で調べたところ、長期療養中で人工透析が必要になった方は多数にのぼり、患者さん自身も職員もこのような方々の人工透析に習熟しています。内科的な全身管理はもとより、四肢の機能を保つための運動療法にも力を入れています。