内科救急指定病院 医療法人 足利中央病院 栃木県足利市

トピックス

2005年新春の警戒事項(2) 【インフルエンザ】

No.8 2005年 1月

宮城県と岐阜県で今シーズン初のインフルエンザ注意報が発せられました。2005年1月11日現在、宮城県が警報(石巻市)、岐阜県が注意報です。注意報は定点(全国約5000の医療機関)当たりの報告数が10を超えると発せられ、警報は30を超えると発せられます。警報は大きな流行の発生・継続が疑われることを示します。注意報は、流行の発生前であれば、今後約4週間以内に大きな流行が発生する可能性が疑われることを意味します。最新情報は「国立感染症研究所・感染症情報センター」のホームページでご覧になれます。

本ホームページのバックナンバーで感染症や海外旅行の感染症対策についても触れていますのでご覧ください。

国際的な騒ぎになった感染症としてSARSと鳥インフルエンザがありますが、終息したとはいえ絶滅したわけではなく、急速な蔓延を防げたという程度に考えて、以下に示すような感染予防の日常注意は必要です。現に1月14日のロイター電ではベトナムで鳥インフルエンザの患者の死亡が2週間で5人目と報じています。

SARSはコロナウィルス、ここで説明するインフルエンザはインフルエンザ・ウィルスによる感染症で、全く違う病原体によるものですが、突然の高熱、筋肉痛、全身倦怠感など極めてよく似ており、症状から区別はできませんので、医療機関における検査が必要です。また鳥インフルエンザは例年ヒトの間に流行しているインフルエンザ・ウィルスとは異なりますが、おなじA型のインフルエンザ・ウィルスによる感染ですので、ヒトに感染したときの症状は酷似しており、一層インフルエンザとの区別は難しくなります。

長崎大学の松本慶蔵名誉教授による過去11年間のインフルエンザ様疾患発生動向(週別)によると1月第1週から数えて4から9週目が発生の山になります。すなわち1月末から2月末にピークとなり、12月から3月の間に一年間の流行が集中してしまいます。

また、同教授の年齢別罹患率と死亡率を見ると、罹患率は5~14歳にピークがありますが、死亡率は85~89歳にピークがあります。15~64歳は罹患率も死亡率も著しく小さく、体力というものを良く表しています。この事実から小学校で流行が始まって、家庭で成人と高齢者に感染していく事実がわかります。幼児と高齢者の予防接種が必須であることがおわかりかと思います。

【予防接種】

予防接種はインフルエンザを完全に防ぐ特効薬ではありません。ちまたには予防接種を否定する無責任なホームページもありますが、その効果は広く認められています。重篤な合併症を引き起こして死亡する可能性を予防し、健康被害を最小限にとどめることは期待できます。接種によりワクチンが有効になるまで2週間、効果は約5ヶ月持続します。

ワクチンの株はWHOが推奨するウィルスする株を基本にして日本の流行状況や流行前の健康な人が持っている免疫の状況などから予測して作られています。近隣諸国の状況も勘案されています。2004~2005年のワクチンにはA型2種類、B型1種類の型に対応しています。早目に接種を受けましょう。流行を予測して適切なワクチンを用意できれば、その効果は劇的です。実際はウィルスの変異が頻繁におこって様々な亜種が生じます。鳥インフルエンザ・ウィルスが変異してヒトに感染するようになるのも変異です。

本来ならば12月上旬までに接種することを勧めます。
厚生労働省はインフルエンザ予防接種ガイドラインを発表しています。

【インフルエンザ脳症】

インフルエンザ関連脳症の原因はよく分っていないのですが、アスピリンに似た抗炎症作用のある解熱剤が、その因子と考えられています。毎年幼児を中心に100~500人に発症し、その10~30%が死亡してほぼ同数の後遺症患者が出ていると推測されます。

解熱剤のうち、アセトアミノフェン以外は全て抗炎症作用があり、「非ステロイド抗炎症剤」と呼ばれます。発熱をタダその現象だけ捉えて解熱剤を安易に使うのは好ましくありません。市販の解熱剤はほとんどが非ステロイド抗炎症解熱剤です。小児には大人用の解熱剤を飲ませないでください。風邪だと判断してしまうのは危険です。必ず受診してください。
抗生物質はウィルスには効きません。安易な抗生物質の服用は危険です。

【予防と対策】

  1. 予防接種(前出)
  2. 栄養と休養:
    全ての保健の基本です。かぜにも有効。
  3. 人混みを避ける:
    インフルエンザウィルスがうようよ居ます。
  4. 温度と湿度:
    ウィルスは低温・低湿を好みます。乾燥している環境ではウィルスが 空中を漂っています。
    加湿器は有効です。適度な暖房も。
  5. 手洗いとうがい:
    これも保健の基本です。手洗いは接触感染を防ぎ、うがいはのどの乾燥を防ぎます。
  6. マスク:
    厚手のマスクを着用しましょう。
    感染を防ぐばかりでなく、咳やくしゃみの飛沫を他人に飛ばすのを防ぎます。

【チェックポイント】

  1. 地域内でのインフルエンザの流行:
    保健所の情報、報道。
  2. 急激な発症:
    前触れのくしゃみ、咳、鼻水などが続かずに急に高熱になる。
  3. 38℃以上の発熱と悪寒、倦怠感、関節・筋肉痛。

インフルエンザは法律で定められた感染症です。あなどらずに、すぐに受診してください。

注: 参考

  1. インフルエンザ情報サービス
    上記WEBのコピーライトは中外製薬にあります。監修は長崎大学の松本慶蔵教授です。分かりやすく解説してあるのでお勧めです。
  2. 詳しくは日本医師会の「インフルエンザQ&A」【一般の方々のために】を勧めます。
    さらに詳しくお調べになりたい方は、同上のインフルエンザQ&A【医療従事者の方のために】を勧めます。
  3. インフルエンザと「かぜ」の違い(トップ7)
    症状 インフルエンザ かぜ
    1)初期症状 悪寒、頭痛 鼻、のどの乾燥感
    2)主な症状 発熱、筋肉・関節痛 鼻汁、鼻づまり
    3)悪寒 ひどい 軽度、短期間
    4)熱の出方 38~40℃、3~4日間 微熱
    5)筋肉・関節痛 ひどい ほとんどない
    6)鼻汁 鼻づまり 治りかけに著しい 初期より著しい
    7)のど 充血、はれ やや充血

→ バックナンバー