内科救急指定病院 医療法人 足利中央病院 栃木県足利市

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2005年新春の警戒事項(1) 【花粉症】

No.7 2005年 1月

昨年の猛暑と日照量の多さは今年の花粉の早期生育、飛散を予想させるものでしたが、早くも花粉症にお悩みの方が診察に訪れはじめました。1961年にアメリカ渡来のブタクサ花粉による花粉症が発見されて以来急速に患者が増加し、いまや5人に一人が花粉症にかかっているという統計があります。
花粉症が増えた原因がいくつか考えられます。

  1. 戦争で荒廃した山野に育ちやすいスギを多く植林した、その後はヒノキを植林
    それらの木々の成長、営林事業の衰退(森林放置)
  2. 食生活が高タンパク化して、かつ食品添加物の増加と継続摂取
  3. 密閉度の高い住居にダニの死骸やフン、新建材、ダスト
  4. ストレス一杯の生活、無意識なストレスの蓄積
  5. 土の露出が減って、アスファルトとコンクリートの地表
  6. 公害:ディーゼルエンジンからの排出微粒子ほか空気中のダスト

花粉症はアレルギー反応の一種です。私たちの体には異物(抗原またはアレルゲン)が体内に入ったときに、それに対抗する物質(抗体)を作って、抗原を排除するシステムが存在します。これを抗原抗体反応とか免疫反応といいます。この反応が抗原に対して適切に反応すれば「生体防御」といって免疫(疫病から免れる)が働いたといえます。しかし、過剰に反応して生体防御の範囲を逸脱して不快な症状が出た場合はアレルギーとなります。

誰でも花粉にさらされているのですが、体内に特定花粉に対するIgE抗体(免疫グロブリン抗体の一種)が一定量以上できるとアレルギー反応が始まるといわれています。抗体を持っていても花粉症を発症しない人もいて、定量的にどれだけ抗体があるか血液検査しても花粉症にかかるかどうか判定できません。しかし、花粉症になった人は必ずIgE抗体が増えています。花粉症そのものが遺伝するとは限りませんが、花粉症になりやすいアレルギー体質は遺伝しますから、親がその場合は注意が必要です。1960年代以前には花粉症という病気は顕著ではなく、「社会現象」ではありませんでした。今日では日本人の食生活(高タンパク食品、ファーストフード、スナック菓子、食品添加物など)の変化、住環境、ストレスに満ちた都市型環境なども花粉症やアトピーなど各種アレルギー症の一因になっていると考えられます。スギ林や里山の近くに住んでいる人々がより多く、より重症な花粉症にかかっているという事実はありません。

日本経済新聞2005年1月15日夕刊トップ記事は花粉飛散が最大級との予想をしています。国民病とさえ呼べるとのことです。青森県弘前大学医学部では昨年の2倍の花粉飛散量になることを予測していますし、獨協医大(栃木県壬生町)では2004年10月にスギ花粉の飛散を確認しており、11月頃から花粉症症状を訴えて受診した人が出始めたとの報告がありました。富山県森林政策課では、2005年には過去14年間平均の2.5倍、2004年はその一年前の冷夏のため花粉が少なかったので、それに比べると2005年は10倍以上の花粉飛散が予想されます。

過去に花粉症を経験なさった方は体の免疫システムが花粉に対して反応するようになってしまっているので、早期療法といって今から抗アレルギー剤を服用しはじめて、シーズン中も継続服用することにより軽度の症状ですませることが可能になります。過去に花粉症経験のない方でも、花粉症かなと思ったら直ぐに受診するという導入療法により症状を軽く抑える、薬を少なくできるなどのメリットがあります。重症になってからの治療では経口ステロイド薬や点鼻薬などが必要になります。

症状発見のポイント:
鼻 --- くしゃみ連発、止まらない鼻水、鼻づまり
目 --- かゆみ、涙、充血
風邪と似ていますが、高熱はでません。頭痛はあっても関節痛はないのが普通です。
のどの痛みもないでしょう。

目と鼻の不快な症状が出たら直ぐに受診することを勧めます。
それでは、早期受診の他に日常生活の中で花粉症を乗り切ることを考えましょう。最も重要なことは花粉とのコンタクトを減らすことです。

【家庭で】

  1. 戸締まり:
    花粉飛散の多い日は窓や戸をしめておく。花粉の飛散は天候の影響が大きいが、雨天でない、風の吹く日の午後1~3時がピーク。早朝と夜間は少ない。
  2. 家電:
    花粉対応の空気清浄機、加湿器の設置、掃除機による花粉除去
    花粉対応のエアコンもある。
  3. 洗濯物:
    外から洗濯物を取り込むときに叩いて花粉をおとす。家の中に持ち込まない。
  4. 帰宅時:
    家に入る前に衣類を叩いて花粉を落とす。(ブラッシング) 手洗い、うがい、洗顔・洗眼
  5. 掃除:
    掃除機は花粉をまき散らす可能性がある、フィルターの細かいものを。
    拭き掃除が良い。
    布製ソファーや座布団にはカバーをつけて、しばしば 洗濯をする。
  6. 生活習慣:
    ストレスは免疫システムに悪影響を与えると言われる。睡眠を十分にとり、ストレスを貯めない生活。高タンパク食品や刺激物、アルコール、たばこを避ける。
    インスタント食品、ファーストフッド、スナック菓子など食品添加物へのアレルギーへの影響があると問題視されている。
  7. ペット:
    ぺットを屋外から室内にいれるときはブラッシングしてから。

【外出時】

  1. 衣服:
    ウールなどの毛羽だったコートなどを避ける。
  2. 着用物:
    帽子とマスク(花粉対応のもの)、眼鏡はゴーグルのように周囲を囲ったものが望ましい。
  3. 交通:
    都市型生活の問題は前述のとおり。コンクリート、アスファルトは地面の露出した郊外と違って花粉を吸収しない、ディーゼル排ガスの微粒子も花粉症悪化要因である。

花粉症に対応して「抗ヒスタミン剤」を薬局で購入して服用することもありますが、眠気の副作用があるので注意が必要です。新しいタイプの抗ヒスタミン薬がありますし、症状緩和の色々な薬がありますので早めに受診して症状に応じた治療を受けてください。アレルギー治療は体質改善とも言われて、年単位の根気のいる治療が必要です。

注:
年末から1月にかけての花粉ニュースは毎日新聞WEBを参考にしました。
獨協医科大学耳鼻咽喉科気管食道科の馬場廣太郎教授のテレビ出演(1月11日NHK)、ラジオ放送、出版物が多いので参考にしてください。

花粉症対策ブック
花粉症を徹底解剖
花粉飛散予報:1月末から2月にかけて多くののWEBが扱い始めます。

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