トピックス
盛夏特集 夏の病気
No.5 2004年 7月昨年と打って変わって今年は酷暑の日々が続いています。夏にちなんで三つの病気についてハイライトを掲載します。
【プール熱】:発熱(38~39度)、のどの痛み(咽頭炎)、目の炎症(結膜炎)
夏休みが始まってプールで泳ぐ機会が増えたと思います。プール熱という病気が大変な勢いで流行していますので注意してください。
正式には「咽頭結膜熱」というアデノウィルス感染症です。潜伏期間は5-7日。表記の三つの主な症状が特徴です。唾液による飛沫感染、唾液の混じったプールの水を介して、家族のタオル共用などで感染します。2004年は昨年に比べて罹患報告が約2倍と多くなっています。免疫力低下説、年間通じてのプール利用、検査技術の向上による検出増加など諸説ありますが、正確な原因は不明です。
注意すれば罹患する危険を相当減らすことができます。
- 日常生活におけるうがいおよび流水と石鹸による手洗い
- タオルを共用しない
- プールでの水泳の途中と後に洗眼とうがい
- 症状が消えても一ヶ月くらいはプールを利用しない
- 罹患した場合は風邪の治療と同じ、安静と水分補給
予防や消毒については最寄りの保健所か国立感染症研究所感染症情報センターを参照してください。
【熱中症】:めまい、けいれん、疲労・虚脱感、失神など
熱中症とは文字通り熱にあたる(中たる=アタル)、言い換えれば熱中毒とでもいえましょう。気温が高く、高湿度の環境で体温調節の失調状態になることを言います。
正しい知識を持つ事により、熱中症を予防することと、初期症状を早期に発見することにより重症化を防止できます。
熱中症は夏の晴天の屋外でなるとは限りません。夏期以外でも室内でも、発汗と水分補給のバランスを崩して熱中症に陥ることがあります。特に老人や幼児のように環境への適応力が弱い状態の人は熱中症になる可能性があります。室内や車内が高温環境にならないように気をつけましょう。
予防の第一条件は高温多湿時の運動中止と水分補給です。真水よりも電解質を含んだスポーツドリンクを勧めます。運動中止などの警戒の度合いは【日本体育協会ホームページ】を参考にしてください。
熱中症の初期症状を程度によりI度の軽症、II度の中等度、III度の重傷度に分類され、従来の熱けいれん、熱失神、熱疲労、熱射病などとは異なった定義になっています。
I度 : |
軽症度 |
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熱失神:皮膚血管拡張により血圧が低下、脳血流が減少してめまい、失神などを起こします。血液塩分不足による四肢、腹筋などの痛みを伴うけいれん(熱けいれん) |
II度 : |
中等度 |
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熱疲労:脱水による脱力感、疲労感、虚脱感、頭痛、吐き気など。頻脈、皮膚蒼白、多量の発汗など。 |
III度 : |
重傷度 |
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意識障害、過呼吸、ショック症状。熱射病。 |
対応:一刻を争うので、救急車を呼ぶ一方、次の三つの基本手当を並行して行います。
救急報告:意識状況、呼吸、脈拍、顔色、体温、手足の体温、環境状況、名前、連絡先
- 休息:安静。日陰へ。衣服をゆるめるか、脱がせる。
- 冷却:涼しい場所へ。木陰、通風の良いところへ運搬。クーラーの効いた室内がよい。
身体に口に含んだ水を霧吹き状に吹きかけてもよい。扇風機、団扇を活用する。 - 水分補給:意識があり、吐き気が無いときのみ。水。出来れば塩分のある水。
補給できないときには医療機関で輸液が必要。
危機管理
- 運動、行楽などの行事に先立ち手順をマニュアル化しておく
- 責任者、副責任者の選定、非常連絡網の設定
- 氷、アイスパックなどの冷却剤の準備
- 送風器具(扇風機、団扇など)を用意しておく
- 水、生理的食塩水、スポーツドリンク
- 緊急連絡(携帯電話)準備
- 日本赤十字社救急法救急員構成受講、消防の救急救命講習
- 催行日の気象情報入手:熱中症情報
【西ナイル熱】:イエ蚊による媒介、風邪に似た症状、脳炎の可能性も
このホームページの「トピックス」欄の4月にSARSについて説明した際にふれました。
外国で発生している対岸の火事だと見ていましたら、いよいよ日本に飛び火する危険が増してきました。7月16日時点で160人の患者が報告されています。CDC(Centers for Disease Control and Prevention)による。またこのホームページは旅行者の健康と言うページも提供していて、旅行者への注意を呼びかけています。(http://www.cdc.gov/travel/)
7月6日づけの新聞各紙がその危険性を報道しました。
朝日新聞から一部を引用しました。
西ナイル熱、米西部で流行 厚労省が注意呼び掛け
米国で患者が増え始めた西ナイル熱について、厚生労働省は6日までに、米西部が今夏、大流行の中心地になる恐れがあるとの見方を示した。「過剰に恐れる必要はないが、ウイルスを媒介する蚊に刺されない工夫を」と旅行者に注意を呼び掛けている。
日本からの観光客が多いカリフォルニア州では既に、昨年を上回る10人の患者が報告され、隣接州でも増加中。同省は現地の領事館に患者への対応法などを通知した。
西ナイル熱は、感染した鳥などの血を吸った蚊が媒介。夏―秋に発生し、発熱や頭痛、意識障害などが起き、死亡することもある。米大陸では1999年にニューヨークで初めて患者が出て以来、流行地域が西に広がっている。
色々な病気がアフリカで発生して、欧州、西アジアに伝わり、そして国際化の波に乗って米国へ、日米の旅行者、貨物の多さから日本へ伝わってきます。米国でも東部から始まって、西へと広がっています。
このウィルスは「蚊」→「鳥」のサイクルで維持されています。コウモリも中間宿主と考えられています。3-15日の潜伏期間ののち、急激な熱性疾患として発症します。一週間くらいで解熱して回復しますが、高齢者などに脳炎になる事もあります。
一番確実な予防は蚊に刺されないことです。日本脳炎の予防と同じです。
予防
- 蚊の発生を防ぐ。周囲の水たまりをなくすのが一番効果的です。容器に汚れた水、たとえばビスケットを溶かしたものを用意して、ボウフラの発生を誘発し、この段階で水を乾いたところに捨てます。
- 網戸、蚊帳などのかの侵入防止
- 戸外の活動では防虫剤を塗る、長袖、長ズボンの着用など
厚生労働省・国立感染症研究所の中の西ナイルウィルスの特集が最も詳しい情報を提供しています。ご覧になってください。本稿の内容の多くはこのホームページを参考にしました。