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病院内で携帯電話が使えない理由
No.3 2003年 3月病院内では人命に直接関わる医療用電子機器が多く使われています。これらの機器は身近なものでは 輸液ポンプや心臓ペースメーカーなどです。
電子機器は本来、携帯電話などからの電波の影響を受けないように設計・製造されているはずなのですが、 ある種類の電子機器は、現在ほどの携帯電話の普及を予想して製造されてはいませんでした。携帯電話機と いえども総務省から免許を受けたれっきとした無線局の一つです。メーカーが製造にあたって手続きしてありますので、ユーザーは何も電波利用の手続きをするは必要ありません。無意識にお使いのようですが、 法律的には拘束を受けています。自動車の運転業務と類似しています。
放送局のような商業無線局は他の無線業務や電子機器に妨害を与えないように運用専任者が常時気をつけて、 総務省技官の立会い検査を受けた機器を所定の場所と設備で運用していますが、携帯電話はもともと移動性に 富んでおり、想定していない思いがけない場所で使われることがあります。航空機の中での使用禁止は良く ご存知でしょう。これは、飛行の安全が電波に依存しており、非常に微妙で微弱な電波を受けて飛行して いるので、携帯電話機の電波の影響を受ける懸念が強いからです。機内で携帯電話を使用すると刑事罰を 受けることがあります。
病院内では電波の使用は非常に限られているのですが、病室からのナースセンターへの遠隔監視信号の送信や、 医療従事者用の無線電話(一斉呼び出しなどの)などに使われることがあります。
もっとも心配されるのが、医療用電子機器が電波の影響を受ける危惧があることです。心臓ペースメーカーが その典型です。本来、これらは無線受信機ではありませんから、電波を受信するはずはないのですが、 これら電子機器内の配線や部品がアンテナの役割をしてしまい、電波を捕らえて、電気信号にしてしまうこと があります。そのため医療機器が誤動作をして不都合が発生することがあります。医療機関と電子機器メーカー の業界団体が協力して実験した結果、安全のためには携帯電話、シチズンバンドなどのトランシーバーを院内や混雑した人ごみ(とくに乗り物)の中で使わないようにすることにしました。なぜなら、あなたの隣にペース メーカーを装着した人がいるかも知れないのです。
しかし、便利な携帯電話だけを一方的に目の敵にしたような状態は、長い年月をかけて緩和される方向です。 1990年代後半から製造された医療機はいままでよりも電波の影響を受けにくいように作られています。 携帯電話だけが悪いのではなく電波を不必要に感受してしまって誤動作する電子機器も問題であるという 「電磁両立性」が認識されてきたのです。この傾向は医療機器だけではなく、家庭電器全般でも同じです。 電気コタツや電子レンジがテレビやラジオに妨害を与えないように、携帯電話機やトランシーバーが電子機器に 影響を与えないようにお互いに耐力を強化して防備しようという傾向が強まっています。 しかし、医療機は人命にかかわることがあるので、特に携帯電話機使用者(電波発射側)で注意しましょう というのが現在の状況です。また公共の場所で呼出し音がけたたましく鳴ったり、大声であたりかまわず通話するというのはマナーの問題であって、電波の問題ではありません。この問題が混同されて、便利な携帯電話が使えないのは問題です。
近い将来、病室から家族と写真やメッセージを交換できるように携帯電話も医療機器も対策が取られるでしょう。 携帯電話を使う上でのマナーの進歩も期待できます。携帯電話機は今よりも弱い電波で通信できるようになるで しょうし、医療機も電波耐力を増す工夫がほどこされるでしょう。
呼び出し専用のポケットベルは電波を出さないのでラジオと同じなのですが、携帯電話機と同じく呼び出し音が 迷惑になることがあります。お使いになるときには病院事務室にご相談ください。