内科救急指定病院 医療法人 足利中央病院 栃木県足利市

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睡眠時無呼吸症候群

No.9 2005年 2月

当院では睡眠時無呼吸症候群の治療に力をいれています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは,睡眠中に,本人が意識することなく一時的に呼吸が止まる症状です。正確に定義すると,「一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上おこる。または,睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上おこる。」ということです。実際に息をとめてみると一分とは続けられないほどつらいことがわかります。

この症状が起きると,睡眠が十分にとれず,日中の眠気,集中力・活力に欠ける,居眠りがちになる,その結果,居眠り運転で事故を起こしやすくなります。重要な仕事をしているときや生命に関わるようなときでさえも居眠りすることが起きます。結果的に社会人として不適応の烙印をおされてしまう(失業),対人関係の悪化,責任賠償の発生,さらには重篤な疾病に陥ることもあります。

無呼吸症を治療せずに放置しておくと血中の酸素不足が深刻になり,心肺機能に多大な負担が掛かります。脳の酸欠,不整脈,高血圧,心不全,糖尿病,その他の合併症が現れることがあります。睡眠中や朝方に死亡する例が多いとされています。事故や突然死などで生存率に影響します。厚生労働省研究班の調査では,睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が20回以上おこる場合,5年生存は84%(死亡率は16%)と報告しています。8年ではさらに下がって60%という報告もされています。睡眠中に死亡する,あるいは突然死など,いわゆる「ぽっくり病」と言われていた中にも睡眠時無呼吸症候群に原因があるものがあったに違いありません。

どんな人がなるか,次の事項に思い当たる人は診察を受けてください。

いびき

睡眠時無呼吸症候群は「いびき」に大変関係があります。いびきが睡眠時無呼吸症候群を見つける重要なサインとなります。無呼吸症候群の人は体重の増加(肥満)で大きないびきをかくという特徴があります。「大いびき」をかくようであれば注意が必要です。とくに若いころの体重に比べて大幅に増加した壮年,老年者の場合には睡眠時無呼吸症の傾向が強く現れます

通常のいびきは呼吸に合った規則的な継続的なもので睡眠時無呼吸症ではありません。

無呼吸症のいびきは間欠的,不規則で,静かになったときに呼吸が止まっています。
いびきのかきやすさをまとめますと,肥満,首が太い,二重顎,下あごが後方に引き込んでいる,毎晩アルコール,鼻づまりなどの身体的,日常習慣(飲酒)などの特徴があります。これらの身体的特徴は,睡眠時に気道が圧迫され,気道が狭くなっている状態を意味します。本人は気が付かないことが多いので,家族が気をつけてあげてください。

昼間の眠気

日中傾眠といい,普段十分に睡眠をとっている(つもり)にもかかわらず日中普通寝てはいけない状況,たとえば会議中,仕事中,映画館,講演会,コンサートなど自分に興味がある活動状態であっても眠ってしまいます。重要な仕事中はもちろん,運転中にも居眠りすることがあります。

オーストラリア・メルボルンのDr. Murray JohnsがEpworth Sleepiness Scale (ESS)という分かりやすい日中傾眠の診断表を作りました。10点-12点はボーダーラインです。12点以上の人は速やかに睡眠時無呼吸症の診察を受けて治療をしてください。

0=眠ってしまうことはない
1=ときには眠ってしまうことがある(軽度)
2=しばしば眠ってしまう(中等度)
3=ほとんど眠ってしまう(高度)
状況 採点
1.座って読書中
2.テレビを見ているとき
3.会議,劇場などで静かにすわっているとき
4.乗客として一時間続けて自動車に乗っているとき
5.午後,休息のために横になったとき
6.座ってひとと話をしているとき
7.飲酒せずに昼食したのち静かにすわっているとき
8.自動車を運転中に信号や渋滞などにより数分止まったとき
合計点

Johns MW. A new method for measuring daytime sleepiness: The Epworth Sleepiness Scale. Sleep 1991; 14(6):540-5.

【検査】

終夜睡眠ポリグラフィーという検査を行います。体に4つのセンサーを装着して自宅で寝て頂きます。一泊入院で検査することもできます。呼吸の状況や体位を記録します。

【治療法】

日常生活改善が一番身近で実行可能でしょう。就寝前の飲酒を控える,減量・ダイエットにより減量をはかります。睡眠剤の影響もあります。ポータブル空気加圧器により鼻から加圧空気を送り込みながら睡眠する経鼻的持続陽圧呼吸法(CPAP療法)により気道を確保する方法もあります。口腔内装着具(歯科装具)は比較的軽い無呼吸症候群に有効です。気道内の扁桃の極端な肥大、口蓋垂(のどちんこ)が極端に長いなど外科手術の必要な場合もあります。症状の程度により治療方法が確立していますので心配は要りません。医師と相談してください。

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